義歯製作 岩手医科大学 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野

当講座の義歯の製作について

2011-09-06

有床義歯に関しては一般的な症例に限らず
・顎堤吸収が高度
・顎位が不安定
・すれ違い咬合
などの難治症例に関して以下の術式を用いた専門的な治療を行っております。

・個人トレーを用いた辺縁形成による印象
・フェイスボウトランスファーによる半調節性咬合器の使用
・ゴシックアーチ描記法による顎位の決定
・チェックバイトによる顆路角の決定
・リマウントによる咬合調整

実際に行っている治療法について以下に紹介します。
当科では

1. 診査
2. 概形印象
3. 精密印象
4. 咬合採得、フェイスボウトランスファー
5. ゴシックアーチ描記法
6. 人工歯排列
7. 蝋義歯試適、前方チェックバイト
8. 完成、スプリットキャスト法による咬合調整
9. リマウント、咬合調整

といった流れで治療を行っています。

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精密印象採得

 当講座では、個人トレー+コンパウンドによる筋形成を行い、シリコン印象材で精密印象する方法を採用しております。単に印象域を決定するだけでなく圧をコントロールする意味でも個人トレーは必須です。当講座では在籍3年目ぐらいにはある程度の無歯顎の下顎精密印象が採得できることを目標の一つとしております。

精密印象1個人トレーにコンパウンドを盛ります

精密印象2左右のバランスがポイントです

精密印象3シリコン印象材でウォッシュします

フェイスボウトランスファー

 咬合採得後にフェイスボウトランスファーを行います。頭蓋に対する上顎の位置関係を咬合器にトランスファーします。当講座では様々な半調節性咬合器を使用しておりますが、基本的に義歯はコンダイラー型(HANAU H2-O)で製作しております。ロングスパンのブリッジはアルコン型(DENAR mark2)で製作しております。

フェイスボウフェイスボウで上顎模型をマウントします。

ゴシックアーチ描記法

 多くの症例でゴシックアーチ描記法を行っております。ゴシックアーチとタッピングポイントの位置関係により正確な顎位を採得します。ゴシックアーチ描記法はフラビーガムの症例では床自体が移動しやすいため不正確になる可能性があるので注意が必要です。フラビーガムの場合、中心位におけるチェックバイトが適しています。

ゴシックアーチ描記法1咬合器装着後に上顎描記針、下顎描記板で製作しています。

ゴシックアーチ描記法2ゴシックアーチとタッピングポイントの位置により判断します。この場合、前方滑走路上でアペックスよりやや前方であれば問題ないと考えます。

人工歯排列

 人工歯排列では、基本的にフルバランスドオクルージョンを付与します。症例によってはよりリンガライズドオクルージョンに近い咬合を与えることで側方圧を減少させます。また、審美的な要件を満たすために適切なリップサポート、咬合高径が重要です。

人工歯排列排列位置がうまく行かない場合、印象や咬合採得にミスがある場合が殆どです。

ろう義歯試適

 ろう義歯試適はまず前回採得した顎位が適切かどうかを判断します。早期接触部位がないかどうかなどをチェックします。顎位に問題なければ審美性のチェックを行います。咬合高径やリップサポート、スマイルライン等をチェックします。問題なければ前方チェックバイトを採得し、顆路角を調節します。

チェックバイト前方チェックバイトは前方に出す量で容易に顆路が変わってしまうため、どれだけ出させるかは術者の熟練度に左右されます。

顆路調節顆路調節はスプリットキャスト法を利用して行います。

義歯完成、調整

 義歯完成後には、スプリットキャスト法により削合を行います。その後、口腔内で粘膜面の調整等を行います。粘膜面の調整後に中心位におけるチェックバイトを採得し、リマウントし口腔外で咬合調整を行います。口腔内のみで咬合調整した場合、フルバランスドオクルージョンにはなかなかなりません。よりリンガライズドオクルージョンに近い咬合を付与する場合口腔内の調整でも十分対応できます。

リマウントリマウントして咬合調整を行います。口腔内で行うよりも正確に速く行うことができます。