義歯の調整間隔 岩手医科大学 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野

義歯セット後、1日、3日、1週間後に調整した方がいいのはなぜ?

2011-08-25

 義歯をセットした次の日、3日後、1週間後に調整した方がいいという風にいわれます。この間隔にエビデンスがあるとはあまり思えませんが、これに理由をつけるとすると以下のようになるかと思います(あくまで抽象的なものです)。

・義歯セット1日後

 義歯セット1日後は痛みに対する対処が優先されます。義歯セット当日にある程度しっかり調整したとしても、義歯を実際使用してみると色々な部位に痛みが発生する可能性があります。これは粘膜の沈下量が部位によって違うこと、粘膜下にある骨の小さい突起の存在、義歯の重合収縮による変形などが原因で起こる痛みと考えられます。また、上顎義歯後縁が長いことによる嘔吐感や、咬頬、咬舌などといったことも起こりえます。こういった不快症状をしっかり治療しないと、患者さんは義歯を使用してくれないかもしれません。1日はだいたい我慢してくれますが1週間はとても無理です。というわけで義歯セットの翌日はできるだけアポイントをとった方がいいと考えられます。
 ただ、小さい部分床義歯、中間欠損などの場合、わざわざ1日後にみることはないかもしれません。これは粘膜への沈下量が小さく、痛みが出にくいことが予想されるためです。こういった場合1週間後ぐらいでも大丈夫なことが多いです。

・義歯セット3日後

 義歯セット1日後にしっかり痛いところを調整すると、少し楽になります。そうすると、少しご飯を食べられるようになったり義歯を長時間使用することができるようになります。その結果、義歯の粘膜への沈下が本格的に起こってきます。義歯が粘膜へめり込んでくるわけです。その際、やはり粘膜の被圧変位量が小さいところや尖ったところなどが当たって痛みが出てきます。1日目で大まかに調整したとしても3日目には痛みが起こってくる場合が多いです。

・義歯セット1週間後

 義歯セット3日後に調整するとかなり楽になります。そうすると患者さんは色々な物を食べることにチャレンジし始めます。当然強い咬合力が粘膜に加わる可能性がでてくるわけで、その際に痛みが起こる可能性があります。この痛みに対する対処がしっかりできれば、後は適当な間隔のアポイントでコントロールできるようになっていきます。

 義歯セット後には咬合調整も当然必要です。早期な咬合の確立が義歯の予後に関係するという論文は古い物ですが、何個かあったと記憶しております。義歯セット1週間以内に、痛みと咬合がコントロールできれば後は結構うまくいきます。
 フラビーガム、顎堤がかなり悪い、痛みがでやすい(床下粘膜が薄い)などといった場合、やはりこれぐらいの間隔で治療した方がいいでしょう。

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