摂食・嚥下障害のリハビリテーション方法について
2011-09-06
① 口腔ケア
歯科専門職が専門的な口腔ケアを週1回でも行うことで、高齢者の誤嚥性肺炎の発症率を低下させることが分かっています。また、汚い口で食事をしたくないのは健康な人でも病気の方でも同じです。そのため、口腔ケアは口から食べるためのリハビリを行う前提条件となります。口腔ケアを行う際には、歯ブラシや粘膜ブラシなどを用いて、物理的にきれいすることが重要です。汚れや乾燥などがひどい場合などには、当科にて口腔ケアの指導や、専門的な口腔ケアも行っておりますのでご相談下さい。
② 訓練
リハビリテーションの中心となるのが、訓練です。訓練というといわゆる筋トレのイメージがありますが、口から食べる機能のリハビリテーションにも、食べ物を使わないで行う間接訓練(筋トレのようなものを含む)と直接訓練(食べ物を用いる訓練)があります。直接訓練の開始に必要な機能を間接訓練によって鍛えると考えるとわかりやすいでしょう。間接訓練による機能の回復が限界に達した場合でも、代償的手法を用いることで直接訓練を行うことができます。また、呼吸訓練など他の全身のリハビリテーションが必要になることもあります。
・間接訓練(代表的なもの)
口から食べるために必要な器官の動きや協調性が悪ければ、食べ物を使わない間接訓練が必要になります。誤嚥をしやすい方は、誤嚥をしにくい食べ方を練習する間接訓練が必要になります。
A 口唇・頬の伸展マッサージ
唇や頬が硬く、動きにくい時に有効です。
筋肉は使わないと弱ってしまいます(廃用)。これを防ぐためにも行われます。
B 舌・口腔周囲の可動域(ROM)訓練
ある程度舌や口唇を自分で動かせるが、動く範囲が狭い場合に行います。
C アイスマッサージ(冷圧刺激法)
冷たい刺激を利用して、嚥下の反射を起こさせるのを目的とします。
D 頭部挙上訓練
舌骨挙上を鍛え、食道の入り口を広げやすくするための訓練です。
E バルーン拡張法
食道の入り口を広げやすくするための訓練です。
・直接訓練
口から食べる機能を回復ためのポイントは、<安全に><早期から><確実に>食べられる食べ物・食べ方で、食べる練習を開始できるかどうかということになります。そこで、あらかじめ訓練前にVEやVFを行い、その結果から、その患者さんに適した食事時の姿勢や、一口量、食べ方、食べ物を探し出し、食べる練習を開始します。食事だけでなく、水分にトロミをつけたり、ペースト食やきざみ食などを用いて口から食べる練習を行います。
③ 経管栄養法
栄養状態が悪い場合、リハビリテーションの効果がうまく表れません。栄養をとるためには口から摂るのが一番よいのですが、摂食・嚥下障害が重度で口から食べられない期間が長く予想される場合は、栄養チューブを利用して栄養剤を胃や腸へ入れます。口から食べられる量が増えてくれば、徐々にチューブからの栄養を少なくしていきます。経管栄養法には、経鼻胃管、胃ろうなどがあり、一ヶ月以上続く場合は胃ろうが良いとされています。
④ 外科的治療法
重度の誤嚥や、半年~1年以上の長期間にわたって訓練を行っても効果が乏しい場合、医科主治医から外科的治療法の適応という診断が行われることがあります。外科的治療法には嚥下機能を改善するための手術や誤嚥防止のための手術があります。前者は、リハビリのみでは経口摂取が確立できず、かつ手術によって治療効果が見込める場合に行われます。しかし、術後すぐに症状が改善されるものではなく、継続的なリハビリが必要となります。一方後者は、重度な摂食・嚥下障害のために生じる誤嚥に対して、肺などの呼吸器を守るために行われる手術で、気道と食道を分離します。術後誤嚥は生じなくなりますが、喉のところに呼吸するための穴が開くため、外見上の変形が大きくなります。当科では外科的治療法は行うことができませんので、関連医科へのご紹介となります。