摂食・嚥下障害の主な原因は何ですか?
2011-09-06
一般的に摂食・嚥下障害はそれ単独で起こるわけではなく、何かの病気に不随して起こります。最も多いのが脳梗塞などの脳血管疾患に伴う摂食・嚥下障害です。他にはパーキンソン病、重症筋無力症、多発性筋炎などの神経疾患、口腔癌など様々な原因により起こりますが、要介護状態になることの多い病気の多くは、摂食・嚥下障害の原因になりえます。
脳血管障害による摂食・嚥下障害
脳血管障害は脳の血管から出血したり(脳出血、クモ膜下出血)、詰まってしまったり(脳梗塞)する病気の総称です。一命を取り留めたとしても、脳組織の障害により麻痺などの後遺症が残る可能性があります。どこが麻痺(機能低下)するかは脳組織の障害部位によりますので人により様々です。右半身が麻痺したりする場合もあれば、発音機能に異常が出る場合もあります。脳血管障害の急性期には3割以上に摂食・嚥下障害がみられるという報告があります。その多くは1ヵ月程度である程度改善しますが、残念ながら改善がみられない場合もあります。その場合、まず症状を診断し、現在食事が食べられる状態なのかを診断します。食事を食べると誤嚥性肺炎の可能性が高いなら、とりあえず他の方法(鼻や血管から栄養を入れる)で栄養を維持しつつ、リハビリを行います。リハビリの効果が出てきたら再度検査をして食事を開始します。食事といって通常の食事ではなく嚥下食からスタートします。嚥下食にも色々な段階があり、ある段階が大丈夫なら次の段階というようにステップを踏んでいきます。症状が重い場合、通常の食事には戻れず嚥下食止まりということもあります。それでも自分の口から食べる楽しみを失わなかったという点では、大きな進歩であると思います。
加齢の影響について
年をとるとどうしても色々な機能が低下してきます。今食事に困っていない、何でも食べられる、という場合でも摂食・嚥下機能は低下しています。例えば、年をとると筋力が低下して咳払いが弱くなります。咳はのどに貯まっているものをはき出すのに重要で、咳払いが弱いと誤嚥しやすくなります。こういった加齢による筋力の低下や神経筋機構のアンバランスなどの影響が、ある一線を越えればどなたでも摂食・嚥下障害になる可能性があります。こういった筋力低下などを防止するために、デイケアセンターや老人ホームなどでは口や首の周囲を運動する嚥下体操や健口体操などを行っている所もありますし、病院のリハビリ等にも嚥下に関係する筋肉等の運動も取り入れられています。口腔リハビリ外来では、現在症状がなくても、このような摂食・嚥下障害予防を目的とした検査や指導も行っております。