入れ歯の種類 岩手医科大学 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野

入れ歯にはどのような種類があるのでしょうか?

2011-09-06

 入れ歯には大きく分けて部分入れ歯と総入れ歯があります。部分入れ歯は歯が残っており、その歯にはりがね等をかけることにより外れにくくしている入れ歯です。総入れ歯は文字通り歯がなくなってしまい全ての部分が入れ歯になったものを一般的に指します。
 また、保険適応内で入れ歯を製作した場合、プラスチックの部分が多い入れ歯となります。保険適応外のものとしては、入れ歯の金属部分を多くした金属床義歯というものがあります。

①部分入れ歯

 1本のみの入れ歯から1本だけ自分の歯が残った入れ歯までを部分入れ歯と呼びます。保険治療で作る部分入れ歯はピンクのプラスチックが多い設計となります。部分入れ歯を入れることにより歯が動くのを防止し、食べ物が流れていく道ができたり、勿論咬むことができるようになったりします。

部分入れ歯1

プラスチック部と入れ歯の歯の部分、残っている歯にかけるはりがねの部分で構成されます。片側のみ歯がない場合でも、このように反対側まで入れ歯のはりがねをかける必要性があることが多いです。片側だけ歯がないので片側のみの入れ歯でよいと誤解されている方が多いようです。



部分入れ歯2

口の中に入った写真です。残っている歯にはりがねがかかります。これが下顎の一般的な部分入れ歯の形になります。前歯の裏の部分をぐるっと走りますので最初は舌等の違和感があります。



②総入れ歯

 総入れ歯は基本的に全てが入れ歯となります。総入れ歯は歯にはりがねをかけて外れなくするようなことができません。基本的には入れ歯と歯ぐきの吸盤作用で維持させることになります。上顎は落ちないように作ることはさほど困難ではありませんが、下顎は舌があるためかなり難しくなります。舌が動くたびに下の総入れ歯が動きやすくなるためです。

総入れ歯1

プラスチック製の総入れ歯です。総入れ歯の噛み合わせは自分の歯とは全く違った噛み合わせを付与します。また、前歯が強く咬むと入れ歯の動きが大きくなったり色々と良くないことが起こるため、上下の前歯同士を強く咬ませません。前歯でかみ切ることが難しくなります。



 総入れ歯を成功させるための条件としてよく言われるのは、歯を抜いて残った顎の土手の高さと幅です。「土手がないので入れ歯がうまくいかない。」と言われる患者様がよくいらっしゃいます。残念ながら、入れ歯を使用していると土手はだんだん減っていきます。土手が減ってくると入れ歯が動きやすくなってきます。

顎堤

歯がなくなるとこのように土手だけになってしまいます。この土手の高さや幅が入れ歯の安定に重要になります。



その他にも主に以下のようなことが総義歯には関係してきます。

・かみ合わせ
 かみ合わせが悪いと入れ歯が動きやすくなりがたがたします。お年を召されてくると、顎の関節、筋肉等の不具合によってかみ合わせが不安定になりいつも一定の位置でかむことができない場合があります。その場合入れ歯の難易度は相当高くなります。
・かむ力
 かむ力が大きい人は歯ぐきが耐えられずに痛みが出ます。かむ力をコントロールするのはかなり困難です。
・唾液の量、質
 唾液が入れ歯と歯ぐきの間を埋めて吸盤作用が働きますので、唾液が全く出なければ入れ歯は外れやすくなります。唾液の量が少ない方には、保湿剤等を併用し定期的にお口の中をしめらせながら入れ歯を使用していただく場合もあります。高齢になってくると唾液の量は減少してきます。
・歯ぐきの質
 高齢になってくると、歯ぐきがだんだん薄くなってきます。歯ぐきは入れ歯にとって座布団のような存在です。

痛み

入れ歯のかむ力が加わると入れ歯が歯ぐきにめり込みます。歯ぐきの下には硬い骨が存在しています。骨は色々な形をしており、尖った部位もあります。歯ぐきは入れ歯と尖った骨に挟まれて痛みを感じます。厚い座布団と薄い座布団では当然薄い座布団の方が痛くなりやすいように、歯ぐきも薄くなれば痛みを感じやすくなります。



当講座では、高齢患者様の、土手が減ってしまった、かみ合わせが不安定といった難しい入れ歯の治療を数多く行っております。


 もちろん総入れ歯では見た目も大事です。当講座では歯の形態、色、位置などを検討し、入れ歯を入れることにより若々しい口元(といっても限界がありますが)になるように入れ歯の製作を行っております。

排列

患者さまにあった口元、歯並びを心がけています。単に入れ歯の歯の種類や色だけで口元が整うわけではありません。歯をおく位置により口唇部の適切な膨らみが決まります。このおく位置が悪いと、よくありがちなくぼんだ顔貌になってしまいます。



③金属床義歯

 金属床義歯とは、普通の入れ歯より金属を多くしたものをさします。部分入れ歯でも総入れ歯でも製作することができますが、保険がきかず高価なものとなります。高い金額が払うだけあって金属床義歯を入れる利点は色々あります。代表的なものは
・金属なので薄くできる。
 薄くできると当然違和感も少なくなります。
・壊れにくい
 当然プラスチックよりは壊れません。
・熱を感じやすくなる。
 熱いものを熱い、冷たいものを冷たいと感じやすくなります。プラスチックの入れ歯だと熱を感じにくいです。

金属床義歯

金属製の総入れ歯です。使う金属の種類や量によって色々なバリエーションがあります。



 金属の主流はCo-Cr合金でしたが、最近ではチタン合金を用いることが多くなってきました。チタン合金の長所としては、
・軽い
 他の金属床義歯と比較してかなり軽いです。
・生体親和性が高い
 体に害が少ない金属です。
最近は眼鏡のフレームなど色々な所で使用されています。

チタン床

下顎のチタン製の部分入れ歯です。チタン合金は鋳造するのが難しいため、技術料がかかります。



ただ金属床義歯は保険がききませんので値段はかなり高くなります。
当病院では、Co-Cr合金の場合、入れ歯の大きさなどにより異なりますが約15~25万円、チタンの場合、それよりも5~10万円ほど割高になります。

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