入れ歯の作り方、製作期間について
2011-09-06
一般的に、入れ歯は型をとればすぐできる、といったものではありません。特に残っている歯が殆どなくなってきた場合には、製作にかかる回数も多くなります。例として当病院で総入れ歯を製作する際のステップについてご説明します。
1回目 診査、簡単な型どり
2回目 精密な型どり(上顎)
3回目 精密な型どり(下顎)
4回目 かみ合わせの記録
5回目 精密なかみ合わせの記録
6回目 試し入れ
7回目 完成
注:あくまで一例です。
大学病院という専門的な治療を行う場所であるため、一般的な製作方法よりも少し回数が多くなっています。合間に技工作業が必要となりますので、1週間~2週間(技工内容により異なります)の間隔で治療が進みます。ということは完成するのには2ヶ月程度かかるということになります。歯がどのように残っているか、などで実際の回数は少し異なる場合がありますのでご注意ください。
入れ歯の製作前に、残っている歯の根の治療や差し歯等の治療が入る場合、さらに長くなります。
精密な型どりについて
当科では、簡単な型どりからおこした石膏模型を診査後、個人トレーというものを製作します。精密な型どりは個人トレーを用いて患者さん個々の筋肉の動きなどを型どりに反映させます。
個人トレーに熱を加えると変形する材料を用いて筋肉の動きを取り込みます。総入れ歯や部分入れ歯といった入れ歯の種類に関係なく基本的には個人トレーを使用して精密な型どりを行います。
型どり終了です。型どりに使う材料も、簡単な型どりとは異なる材料(付加型シリコーンゴム印象材)を使用します。こういった精密な型どりにより、より個人個人にフィットした入れ歯を製作することができます。
精密なかみ合わせの記録について
かみ合わせの記録に関しては、2回に分けてとることがあります。2回目は1回目よりも精密な記録となります。当講座では総入れ歯のかみ合わせの決定に用いています。ゴシックアーチ描記法といいます。
1回目のかみ合わせを記録したあとにこのような装置を噛み合わせの装置上で製作します。
顎をいろいろな方向に動かし、顎がどのように動くかを観察します。だいたい上の写真のように矢印を描きます。さらに、かちかちとかんでいただいたときの位置が、矢印のどこら辺にあるかを診断し、実際に入れ歯のかむ位置を決定します。下の写真あたりの位置がちょうど良い所となります。最終的な噛み合わせは術者が決定しますが、ゴシックアーチ描記法は、患者様の協力なしには行えません。
試し入れについて
最終的に完成する一歩手前の段階で試し入れをします。試し入れの際に今まで決めてきたかむ位置が皆さんのお口にフィットしているかどうかを確認します。歯並びや見た目も重要なところです。また、顎の関節の動く角度等を採得し、機能的にも問題のない入れ歯に仕上げていきます。最終チェックですので、オッケーでない場合再度歯を並び直したり、噛み合わせを取り直したりして、何回か試し入れが必要になる場合があります。これは大学に来られる方の多くが噛み合わせが不安定だったりすることが多いためです。
入れ歯を製作する段階でロウの上に歯を並べたところです。これをお口の中に試し入れをすることにより、見た目、噛み合わせ等問題がないことを確認します。