入れ歯の調整は必要? 岩手医科大学 歯科補綴学講座 有床義歯補綴学分野

入れ歯の調整はなぜ必要?
2011-09-06

 入れ歯は入れたら簡単に使える、という物ではありません。入れた直後によく起こることとしては、
 ①痛み
 ②義歯の大きさによる異物感
 ③頬や舌をかむ
 ④かめない
 ⑤発音しにくい、電話口で聞き取りにくいと言われる
 ⑥気持ち悪い、吐き気がする
 ⑦熱を感じにくい、味が変わった
 ⑧入れ歯が取り外しにくい
 こういったことが起こりえます。特に痛みは入れ歯を装着後に最も頻繁にみられる症状です。

痛みについて

 入れ歯は完成したときに少し変形して小さくなってしまいます。これはうまく作製したとしても材料の特性上避けることができません。小さくなってしまったわけなので、少し削って緩くしてあげないとぴったりと入りません。最初からある程度の調整が必要ということです。
 また人間の体には、多少力がかかっても大丈夫な所とそうではないところがあります。口の中も同じです。かみ合わせの力に耐えられる所と耐えられずに痛みが出るところがあります。私たちは痛みが出やすい場所は把握していますが、残念ながら痛みが出る場所は人によって様々です。実際にご飯を食べていただいたりして、痛みが出る場所を調整する必要があります。 
 調整は平均すると4回~6回程度は必要です(個人差があります)。入れ歯を入れた当初が最も痛みが強くでるため、当講座では
 ①入れた次の日
 ②3日後
 ③1週間
 ④痛みに応じて適宜
を一般的な調整サイクルとして治療を行っております。できるだけ強い痛みを早く取り除くように配慮しております。

潰瘍

痛みを我慢しつづけるとこのように潰瘍ができてしまいます。ここまでひどくなってしまうと治療が長引いてしまうので、こうならないように調整を受けることが重要です。




 入れ歯を装着した直後に、いきなり硬いものを食べると当然痛みが強くなる場合があります。入れ歯を装着した際には柔らかいものをとりあえず食べてみて大丈夫なら、次第に硬いものに挑戦していきましょう。


繰り返しますが一番良くないのが、痛みも慣れるだろうと思って病院に行かないことです。痛みは基本的に慣れません。必ず調整を受けましょう。

異物感、発音について

 異物感や発音は、基本的には2週間~1ヶ月程度で慣れてくるといわれています。また、頬や舌をかむ、ということも次第になくなってきます。私たちは、最初から鉛筆で字が書けたわけではなく練習をして習得しました。初めて入れ歯を入れる方にも同様のことがいえます。また、入れ歯を何個も作製している方でも、歯並び等が変わると最初は慣れずに発音しづらかったりします。これも次第に慣れてくる場合が殆どです。
 ただ、慣れてこない方もいらっしゃいます。その際には入れ歯の形態修正などの調整を行って対処していきます。

気持ち悪い、吐き気がする

 上顎の入れ歯の後ろの部分が長いために起こることがほとんどです。人によってはすぐ気持ち悪くなる方もいれば、かなり入れ歯を後ろまで設定しても大丈夫な方もいらしゃいます。気持ち悪い場合、入れ歯の後ろを少し削って調整する必要があります。
 たまに入れ歯が動きやすいために気持ち悪さを訴える方もいらっしゃいます。そういった場合、入れ歯が動かないように修理や噛み合わせの調整が必要になります。

熱が感じにくい、味が変わった

 上顎の歯がほとんどなくなってしまった場合、上顎の歯ぐきのかなりの部分を入れ歯で覆うため、熱を感じにくくなったり、味が変わったりすることがあります。特にプラスチックで製作した場合は熱を伝えにくいため、熱い飲み物でやけどをしやすくなりますので注意が必要です。
 味は、熱感覚が鈍くなることや味を感じる細胞が入れ歯によって覆われることで変化すると考えられます。熱を感じやすくするために金属床義歯を入れたり、インプラントを用いて歯ぐきをあまり覆わない入れ歯を入れたりすることで改善できる場合があります。

頬や舌をかむ

 これも新しい入れ歯になった当初によく起こります。入れ歯の噛み合わせの変更に頬や舌がまだ慣れていないせいで起こります。次第になれていくものですが、どうしても慣れない場合、噛み合わせを少し調整してあげることでかなり改善することが多いです。

咬頬

入れ歯を初めて入れる場合には、元々歯が無かった部分に頬や舌が入り込むのが普通になっているため、入れ歯を入れた場合、そういった頬や舌をかんでしまうことがよくあります。次第に慣れてきてかまなくなってきます。それでもかむ場合、かみ合わせの調整が必要かと思います。


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